国会議員は衆議院で二期目、参議院で一期の折り返しを迎える三年が過ぎるとみんな体型が似てくる。後ろ姿では区別が付きにくくなる。背中に脂がのり、腹が出る。いわゆるメタボ体型だ。私も含めて議員のメタボ率は相当高い気がする。なぜ皆が同じ体型になるのか。この謎を考えるに、極めて明快な答えを発見した。要するに議員は皆、同じものを食べているのだ。
議員の食生活は定型化している。議員の一日は朝八時からの自民党本部での部会から始まる。ここで各分野の長期的ビジョン、立法の議論がなされる。ほとんどの議員は宿舎住まいだから朝メシは部会で出される朝定食となる。これが結構なボリュームだ。箱弁当形式でおかずが四品、それにどんぶり飯と味噌汁が付く。焼き海苔は 備え付けがあって希望者が取る(農林部会には特別に納 豆が付く)。この朝定食を平均五分間ほどで平らげる。残せればいいのだが、子どもの頃から親に「食べ物を残すな」と仕込まれているし、日本の食糧自給率やゴミ問題を考える立場でもあり、最後の一粒まで食べる(厚労政務官に就任以来、日本の成人病による医療費の削減を考えれば「残すか」とも思うことがある)。
そして午前中を部会・委員会で過ごし、昼メシはまた党本部の会議で食べる。このメニューが三百六十五日ほとんどといっていいほどカレーだ。通常、議員は火・水・木・金の週に四日の昼メシも党本部で食べる。それがすべてカレー。このほかに首相官邸でもカレー懇談会、土曜・日曜に自宅に帰ると子供の希望でカレー。一週間にいったい何皿カレーを食べるのか、まさに「インド人もびっくり!」するほどカレーを食べる(もっとも、インドにはカレーという料理はなく、要するに日本の醤油や味噌と同じ、国民的調味料ということらしい)。
なぜ自民党本部の昼食会はカレーが多いのかといえば
① 参加人数が不確定でも対応しやすい
② 電気炊飯器で保温が効き、温かいものが出せる
③ すぐ出せる、すぐ食える
といったことらしい。議員は昼メシの度に「またカレーかよ」とぶつぶつ言うが、この党本部のカレーが意外にウマイ。生卵をかけて食べる方もいる。またインドの話に戻るが、インドには「アーユル・ヴェーダ」という古来からの医術があり、医食同源でスパイスにもそれぞれ効能があるらしい。カレー粉の40%はターメリック、日本でいうウコンで肝機能を高める作用があるという。自民党の国会議員に酒豪が多いのもカレーから毎日大量のウコンを摂取しているせいかもしれない。
カレーは日本人が大好きなメニューの一つだ。小学生の好きな給食アンケートの堂々一位もカレー。
子供の頃、遊び疲れて家に帰ってカレーの匂いがすると胸がときめいた。母が作るカレーは豚のバラ肉のカレーだった。中学の野外活動で作ったのもカレー。米を飯ごうで炊いた。高校の水泳部の夏合宿の昼メシもカレー。おかわりするのが面倒くさいのでサラダボールで食べた。
大学に入って、東京で初めて高級料理としてのカレーを食べた。新宿の中村屋、東銀座のナイル。あまりに美味くてカレーの概念が変わった。でも99%は学生食堂のカレーを食べた。当時百五十円で学食で一番安いメニューだった。関西出身の仲間がカレーにウスターソースをかけるのを見てびっくりした。関東ではカレーにかけるのは醤油と決まっていたからだ。東京でシーフードカレーを食べて感激し、田舎の父に「お父ちゃんは、シーフードカレーって食べたことねっぺ」と言った時、「バカヤロウ、戦前この辺に肉が入ってるカレーなんてねえ。みんなアサリで作ったんだ」と言われた。昔の千葉の半農半漁の村の話だ。改めてカレーは国民食として歴史があり、地方ごとに作り方や食べ方があるんだなと感じた。
うちの新人秘書が「国会議員っていうのはろくなもん食ってないんですね」と言ったが、事実だから怒れない。議員の日常生活の一端でもご理解いただければ幸いだ。
党員の皆さん、自民党本部にお越しの際には、九階の食堂でカレーを召し上がってください。このカレーを食べながら国会議員は日々頑張っています。なお、昼の部会のカレーには、辛味スパイスを置くことを提案したい。
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