農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案
食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案

平成18年4月12日(水曜日) 農林水産委員会

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稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野博一君。
松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。
 品目横断的担い手の安定施策に関する法案につきまして質問をさせていただきます。
 現在、日本の農業政策におきます最も重要な課題は担い手の育成にあります。私の地元の千葉県の千葉市や市原市におきましても、圃場整備が終わった優良な水田ができ上がっている地域においても、担い手が高齢化をして将来への継続の不安が聞こえてまいります。現在、日本の水田耕作者の平均年齢は六十五歳と言われております。このままでは、他のあらゆる農業振興策がとられるとしても、十年後の継続が大変厳しい状況となります。
 この時期に、農業従事者を対象とする抜本的な農業政策の変換、改革が行われることは、まさに待ったなしの重要な改革であることは言うまでもありません。この政策が成功するか否かは、いかに、対象の農地を集約して対象の農業者数を上げていくか、合理的で競争力のある農業経営をつくっていくかということにかかっているわけでありますけれども、前回の委員会におきまして、我が党の二田委員の質問に対して、現時点において、対象となる農地面積は五割程度であり、農業者数としては三割程度が対象になるとの試算が示されました。正直、少ないなというような感想を持ったわけであります。
 この農政の転換を成功させるために、将来にわたりまして、どのようなビジョン、見通しを持ち、どのような個別具体的な政策によってそれを達成しようと考えているのかについて質問をさせていただきます。
井出政府参考人 お答えいたします。
 平成十一年の七月に制定されました食料・農業・農村基本法におきまして、国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するために必要な施策を講ずるとされております。
 このため、基本法に基づきまして、施策を推進していくに当たりまして、目指すべき効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の姿を明らかにすることとし、平成十七年三月には、「農業構造の展望」としてお示ししたところでございます。
 この「農業構造の展望」におきましては、平成十六年に二百九十三万戸であった総農家数が、平成二十七年には二百十万戸から二百五十万戸程度になり、このうち効率的かつ安定的な農業経営は、家族農業経営で三十三万戸から三十七万戸程度、集落営農経営が二万から四万程度、法人経営が一万程度と見込んでおります。また、これらの経営によりまして経営される農地が全体の七、八割程度になると見込んでいるところでございます。
 農林水産省といたしましては、そういった望ましい農業構造の実現に向けまして、今般の品目横断的経営安定対策を初めとしまして、予算、金融、税制など、農業経営に関する各種施策について、その対象をできる限り担い手に集中して重点的に実施することによりまして、効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保を図ることといたしております。
松野(博)委員 対象農地の拡大や担い手の拡大の問題といいますのは、本法案、政策に対します対象者の理解が非常に重要であります。広報に関してはきめ細かく、特に、直接の相談窓口になります地方行政の関連部署や農業関係団体等への十分な指導を行っていただきたいというふうにお願いをさせていただきたいと思います。
 続きまして、本法案の対象については、小規模農家や兼業農家、こういった農家が集落営農に参加することで対象となるということでありますけれども、集落営農に参加できないような高齢者の農家や零細な農家についてはどのように対応していくのかについて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
金子大臣政務官 松野委員御案内のとおり、農業の生産構造の脆弱化が進行いたしまして、強靱な農業構造の構築が待ったなしの課題となっている中で、品目横断的経営安定対策など、農業経営に関する各種施策の対象については、できる限り担い手に限定し、集中的そして重点的に実施することが重要だと考えております。
 今御質問のようなことは、現場をよく回っていらっしゃるのでよくお聞きになると思います。私もたまにこういう質問を聞くわけでございますが、今回、新たに導入する品目横断的経営安定対策につきましては、一定の経営規模要件を満たす認定農業者と集落営農組織を対象として支援を実施することにしておりますが、そもそも、集落営農組織とは、一定の役割分担をするとともに、年齢とか性別とか専業、兼業等を問わずだれでも参加することができるものでございまして、参加しない方はいても参加できない方はいないというふうに考えております。
 仮に、集落営農組織に参加しない場合であっても、例えば、少量多品目生産とか有機農業等を行い営農活動を継続するなどの選択をすることも可能でございまして、こうした取り組みによって、地産地消への貢献など、地域農業において一定の役割を担っていただきたいというふうに考えております。
松野(博)委員 今後の日本の農業の競争力を考えたときに、やる気のある担い手に集中をしていくということは非常に重要な点でありますけれども、また一方で、高齢者の農業従事者の方々や零細な農家の方々は、山間部や過疎地においては現在では主要な農業の担い手でもあります。日ごろからの委員会の議論にもありますとおり、日本の文化の源泉である農村をいかに維持していくかということを考えれば、こういった高齢者や零細農家は農村の主たる構成者でもあるわけでありまして、こういった観点からも、今回の法案の対象者とならない農業従事者に関しても十分な配慮をいただきたいというふうに思います。
 農地の集約と担い手の育成、この二つの課題を考えるときに、両方とも難しいことでありますけれども、私は、農地の集約の方がどちらかといえばやりやすいのかなというふうに考えます。農地の集約が成功しても、そこで従事する担い手が育成されなければ意味がないわけであります。
 現在、若い世代の農業への参加者が少ないという現実はありますけれども、彼らが農業に関心がないというわけではありません。いわゆる自然回帰の志向でありますとか、新たなライフスタイルに適合する面も農業にはあるわけであります。待遇や条件面の整備がされれば、十分に農業に今後とも参加をしていただけるのではないかなというふうに考えます。
 その観点で、私は、現在、社会全体といいますか、行政案件が官から民へという流れがありますけれども、農業政策においては一部民から官へという考え方も必要ではないかというふうに日ごろから考えております。
 農業に官、公が携わるといいますと、かつての中国の人民公社でありますとかソ連のソホーズ、コルホーズのイメージがあって、非常に非効率なイメージがあると思いますけれども、当時と社会意識も全く変化してきております。農地の集約をするという点において考えても、公の信頼というのはまだまだ我が国においては大きいわけでございまして、それを利用するということは効果を発揮していくのではないかというふうに思います。担い手の供給、育成においても、公、国、県、基礎自治体が相当部分かかわっていくということが今後重要であるというふうに認識をしております。
 今回の法案におきましては、民間の農業関係者の活力を十分に発揮していただく、そのためのシステムをつくるということでありまして、これが柱となっていくわけでありますけれども、これをしても足りない部分に関して、農業に対する官の直接的な関与に関しては、今後また場を変えて改めて議論をぜひさせていただきたいというふうに考えております。
 次に、自給率に関して質問、議論をさせていただきたいと思います。
 先ほど、現在、日本の農業政策における最も深刻な問題は担い手の育成にあるとさせていただきましたけれども、今後の日本の農業政策のあり方、方向性を考えるに当たりまして、自給率をどうとらえていくかということが大変大きな要素になっていくんだろうというふうに思います。
 民主党案は、自給率六〇%を目指すとされております。この自給率といいますのは恐らくカロリーベースでの自給率ということであるかと思いますが、一口に自給率と言っても、カロリーベース換算のもの、金額ベースのもの、また自給力と称されるもの等々の考え方があります。農業を産業としてとらえた場合、産業政策的に有効な自給率の指標といいますのは金額ベースではないかと思われます。他の産業において、いわゆるシェアという考え方は生産額ベースであらわせるわけであります。また、いわゆる食料安全保障の観点からいえば、非常時にどれだけの食料を国民に安定的に供給できるかという視点においては、自給力という概念が近いであろうというふうに考えます。
 そこで、カロリーベースでの自給率というのは消費者の食生活の嗜好というのが非常に大きいわけでありますけれども、民主党の食料自給率に関する考え方、それと、それに対する農業政策についてお伺いをさせていただきます。
山田議員 松野委員からもっともな質問でありますけれども、我々、自給率を考えた場合には、いわゆる食料危機になった場合にどれだけ国民にカロリーベースで食料を供給することができるかという考え方に立つもので、やはりこの自給率の考え方そのものが食料安全保障という見地に立つのが最も至当じゃないか、そう考えております。確かに、産業政策でいけば金額ベースなんでしょうが、食料に関しては、食の安全、食料安全保障という見地からやはりカロリーベースじゃないか。
 自給力というのは、非常時にどれだけ自給力があるか、例えばゴルフ場をつぶして芋畑にするとか、そういう話があるかと思いますが、それは大変不確かなもので、どこまでの自給率を換算できるかというと、非常に難しい。そう考えると、やはりカロリーベースで考えていくべきだ、そう考えております。
松野(博)委員 私は、個人的には、非常時における食料供給、いわゆる食料安全保障というのは、エネルギーの自給率等々も考えて総合的に判断をしていったときにどういう意味を持つかというのは、これもまた議論を深めていかなければいけないというふうに考えております。
 今、山田先生の方から民主党の自給率に対する考え方を御披露いただいたわけでありますけれども、法案の中に、六〇%のカロリーベースの自給率の達成ということが書かれてあります。
 この達成に関して、例えば、国内の需要との整合性の問題、小麦等々ですといろいろな使用目的、用途があるわけでありますけれども、また数量の問題、こういった国内需要との整合性、また、この六〇%を達成するに当たっての農地面積等の国土条件、こういった問題に関して、具体的な施策についてお聞きをしたいというふうに思います。
山田議員 大変厳しい質問なんですが、私どもは、五〇%を十年間で達成し、その後目標として六〇%まで持っていく。
 そうなりますと、過去最大の収量、大豆の場合には八十六万トン、菜種の場合には六十四万トンまでいっています。ただ、小麦をどこまで、過去最大七百七十九万トンまでいっていることはいっているんですが、確かに松野委員がおっしゃっているように、小麦に関する需要、これはせいぜい六百万トンぐらいだろう、そういうところかと思います。六〇%まで自給率を達成するとなると、小麦とか大豆とか菜種とか、それだけではなく、畜産物あるいは魚介類、そういったものも含めて六〇%まで持っていきたい、そう考えております。
 ただ、耕地面積についてですけれども、確かに、我々が考えている裏作の利用についても、現在裏作している部分、あるいは裏作を容易にできる部分の面積からすれば非常に足りないんじゃないか、耕地面積が少ないんじゃないか、不可能じゃないか、そういう御指摘じゃないかと思います。
 かつて昭和四十四年の水準からいきますと、裏作、耕地利用率が既に一三七%あったわけでして、さらに昭和四十年でも、あるいはもっと前、昭和三十何年にいきますとかなり裏作に利用しておる。今、基盤整備事業がかなり進みまして、水田においても、乾田率といいますか、排水して畑に裏作利用できる、それが七〇%を超えていると思うんですが、それから、畑に菜種を利用するとかソバを利用するとか、そういった形でいきますと、将来的に考えれば、さらに畜産物とかあるいは魚介類等々を入れていけば、今ある耕地面積を十二分に利用できて、穀物とか農産物においては達成可能であると考えているところです。
松野(博)委員 お答えが水産、畜産までわたる多岐な内容でございますので、今後、その現実性に関しては、まだまだ委員会の議論が続きますので、検証していきたいというふうに考えております。
 政府側に質問をさせていただきたいと思いますが、新たな食料・農業・農村基本計画では、平成二十七年度の食料自給率目標を四五%としております。これもカロリーベースでの自給率でありますけれども、この目標の達成に向けて具体的な施策をどう考えているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
宮腰副大臣 先ほど松野委員の方から御指摘がありました、カロリーベースのほかに、生産額、金額ベースの自給率もあるということであります。
 カロリーベースで申しますと、現在四〇%になっておりまして、国民の約八割の方々がこの自給率について不安を抱いておいでになるというふうな結果が出ております。カロリーベースの場合は、例えば野菜、果樹についてはほとんどカロリーに換算されないということで、そちらは、幾ら需要にこたえる生産を行ってみてもカウントされないという面があります。逆に、畜産物の場合、えさの自給率が低いということでありますので、国産の牛肉、豚肉、鳥肉あるいは卵を食べた瞬間に、カロリーベースでは国産のものであっても自給率が落ちるというような逆の面もあります。
 でありますので、自給率につきましては、もちろんカロリーベースを基本としながらも、生産額ベース、これも自給力という面から考えていくとやはり必要なのではないかというふうに考えております。
 具体的な施策につきましては、まず消費面におきまして、日本型食生活の推進に向けまして、食事バランスガイドの普及、活用に努めるなど、わかりやすく実践的な食育を進めているところでありまして、去る三月三十一日に食育推進基本計画ができましたので、ぜひ、食育について、みずから食を選択する能力を身につけるということで、これを国民運動としてこれからしっかりと展開してまいりたいというふうに考えております。生産面におきましては、食品産業と農業の連携強化、あるいは経営感覚にすぐれたやる気と能力のある担い手の育成確保を図ることにより、需要に即した生産を進めているところであります。
 先ほど申し上げたえさの自給率の問題でありますが、粗飼料で一〇〇%、それから濃厚飼料で一四%、これが目標になっておりますけれども、仮に達成された場合には、自給率はカロリーベースで二、三%上昇するということでありまして、個別作物ごとの目標を基本計画に書き込んでおりますけれども、それぞれの個別作物について、しっかりと自給率向上に向けて頑張っていきたいというふうに考えております。
松野(博)委員 食育に関しては、農業政策とも極めて今後密接に関連をしてくる分野でありますから、十分に議論を深めていきたいというふうに思います。
 私は、今議論をさせていただきました食料自給率の問題、また、産業政策としての農業の問題、こういったこともございますけれども、もう一つ、今後の日本の農業のあり方を考えるに当たって、長期的な視点においては、予想される世界的な食料不足の時代において、日本の農業が果たすべき責任とは何かということもしっかり認識をしていかなければいけないというふうに考えております。
 海外で拡大する砂漠や荒れ地を見るにつけ、日本がいかに世界で有数の農業適地であるかということを改めて考えるわけであります。土壌、気候、雨量等、恵まれた日本の農業条件の中で、また一方で、世界では子供たちが飢餓状態にある国もある、そして、先進途上国と言われた国々も、社会の発展段階において食生活も変化をしてきた。こういった国際的な状況変化の中で、日本の農業が、自国の自給率も重要でありますし、産業としての日本の農業という視点はもちろん重要でありますけれども、日本が農業適地として世界的に果たしていくべき責任、このことも今後の日本の農業政策の中に織り込んでいかなければいけない、そう個人的に考えております。
 最後に、需給調整システムについてお伺いをさせていただきたいというふうに考えております。
 長年にわたりまして、生産調整というものは日本の農業政策の大きな柱の一つでありました。ネガティブな批判もあるわけでありますけれども、しかし、一方で、価格を維持することによって、農業従事者の生活を守り、トータルで日本の農業政策に寄与してきたという側面は、やはり率直に評価をしなければいけないという点もあるかと思います。
 今回、新たな需給調整システムが導入をされるということでありますけれども、生産現場においては、新たな需給調整システムは生産調整というのをしっかりされるのかなという不安の声も聞くことがあります。その新たな需給調整システムは、現行のシステムとどのように違うのかについて説明をしていただきたいというふうに思います。
岡島(正)政府参考人 お答えいたします。
 十九年産からの移行を目指しております新たな需給調整システムにつきましては、農業者、農業者団体が、地域の販売戦略に基づき、主体的に需要に応じた生産に取り組むことにより、米づくりの本来あるべき姿の実現を図るものでございます。
 新たなシステムのもとでは、農業者、農業者団体の主体的な取り組みに対しまして、国を初めとする行政が各段階で支援を行うことにより、需給調整の円滑な推進を図るものを考えております。
 すなわち、これまで、国を初め、行政による生産目標数量の配分を行っておりましたけれども、新たなシステムにおきましては、国、都道府県、市町村のそれぞれが需要量に関する具体的な情報の提供を行います。その上で、JA、市町村などを構成員といたします地域協議会が、地域全体における需給調整の調整機関として重要な役割を果たすこととしておりまして、ここでは、このように行政から提供される情報をもとにいたしまして、配分の一般的なルールなどを関係者の協議により決定していただき、JAなどの生産調整方針作成者による主体的な需給調整を支援することといたしております。
 こうしたことを受けまして、JAなどの生産調整方針作成者は、地域協議会からの需要量に関する情報や、市場シグナルに基づいて生産目標数量をみずから決定するとともに、傘下の農業者へ配分することといたしております。
松野(博)委員 農業者の主体的な生産調整を取り入れていくということでありますが、しかし、全体としてより有効に機能するためには、これまでどおり、政府ももちろんでありますけれども、都道府県、市町村の行政もしっかりと関与していかなければいけないというふうに思います。その点に十分留意をしていただきたいと思います。
 そのことをお願いし、質問を終わらせていただきます。